大学・専門学校進学のための高等教育修学支援新制度:給付型奨学金と授業料減免の活用ガイド
ひとり親家庭におかれましては、お子様の教育費、特に大学や専門学校への進学費用が大きな負担となる場合がございます。しかし、学ぶ意欲のあるお子様が経済的な理由で進学を諦めることがないよう、国による「高等教育の修学支援新制度」が設けられています。
この制度は、経済的な困難を抱える世帯の学生を対象に、返還不要の給付型奨学金と授業料等の減免を組み合わせた手厚い支援を提供するものです。本記事では、この高等教育の修学支援新制度について、その仕組み、対象となる条件、具体的な申請方法、そして相談窓口に至るまで、分かりやすく解説いたします。お子様の進学を検討されているひとり親の皆様が、安心して制度を活用できるよう、必要な情報を提供することを目指します。
1. 高等教育の修学支援新制度とは
高等教育の修学支援新制度は、学ぶ意欲のある学生が、家庭の経済状況にかかわらず大学、短期大学、高等専門学校、専門学校で学べるよう、国が支援する制度です。この制度は、主に以下の2つの支援を柱としています。
- 給付型奨学金: 学生生活を送るための費用を支援するもので、返済の必要がありません。
- 授業料等減免: 入学金と授業料の負担を軽減するものです。
これらの支援はセットで提供され、学生が学業に専念できる環境を整えることを目的としています。
2. 支援の対象となる学校と学生
本制度を利用するためには、対象となる学校と学生のそれぞれに条件があります。
2-1. 対象となる学校
国が定める要件を満たし、支援の対象機関として認定された大学、短期大学、高等専門学校(4年次・5年次)、専門学校が対象です。お子様が進学を希望する学校が対象機関であるかは、日本学生支援機構(JASSO)のウェブサイトや各学校のウェブサイトで確認することができます。
2-2. 対象となる学生の条件
学生が本制度の対象となるためには、主に以下の二つの基準を満たす必要があります。
- 学力基準:
- 高等学校等における学業成績や、レポート、面談などにより、学ぶ意欲があることが確認できる学生が対象です。具体的な評定平均値は問われないケースも多く、これまでの学習状況や将来の目標などを総合的に評価されます。
- 家計基準:
- 世帯収入や資産の状況に応じて、支援区分が判断されます。住民税非課税世帯の学生、またはそれに準ずる世帯の学生が対象となります。ひとり親家庭の場合、家計基準を満たしやすい可能性があります。
- 世帯収入の目安:
- 第Ⅰ区分: 住民税非課税世帯(年収約270万円未満の世帯が目安)。
- 第Ⅱ区分: 住民税非課税世帯に準ずる世帯(年収約270万円以上約300万円未満の世帯が目安)。
- 第Ⅲ区分: 住民税非課税世帯に準ずる世帯(年収約300万円以上約380万円未満の世帯が目安)。
- 世帯構成や控除の状況によって具体的な基準は異なりますので、日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」を活用し、ご自身の世帯がどの区分に該当するかを確認することが推奨されます。
3. 支援を受けられる金額の目安
支援を受けられる金額は、学生の世帯収入の区分(第Ⅰ区分~第Ⅲ区分)や、自宅から通学するか、自宅外から通学するかによって異なります。
3-1. 給付型奨学金(月額)の目安
- 第Ⅰ区分:
- 国公立大学(自宅通学): 約29,200円
- 国公立大学(自宅外通学): 約66,700円
- 私立大学(自宅通学): 約29,200円
- 私立大学(自宅外通学): 約66,700円
- 第Ⅱ区分: 第Ⅰ区分の2/3の金額
- 第Ⅲ区分: 第Ⅰ区分の1/3の金額
専門学校や短期大学の場合も同様に設定されています。
3-2. 授業料等減免の上限額(年間)の目安
- 第Ⅰ区分:
- 国公立大学: 入学金約28万円、授業料約54万円
- 私立大学: 入学金約26万円、授業料約70万円
- 第Ⅱ区分: 第Ⅰ区分の2/3の金額
- 第Ⅲ区分: 第Ⅰ区分の1/3の金額
これらの金額は上限であり、進学する学校の種類や学科によって実際の支援額は変動する場合があります。最新の情報は必ず日本学生支援機構や進学先の学校でご確認ください。
4. 申請のステップと必要書類
本制度の申請には、複数のステップと書類の準備が必要です。計画的に進めることが大切です。
4-1. 申請の流れ
主に高校3年生の時に申し込む「予約採用」と、大学等に進学後に申し込む「在学採用」があります。予約採用の方が、進学後の学費に関する見通しが立てやすいため、可能な限り高校在学中に申し込むことをおすすめします。
4-2. 申請ステップの概要
- 情報収集: 日本学生支援機構(JASSO)のウェブサイトで制度の詳細を確認し、「進学資金シミュレーター」で家計基準の目安を把握します。
- 学校の確認: お子様が進学を希望する大学・専門学校が本制度の対象機関であるかを確認します。
- 申請書類の準備: 申請には、以下の書類をはじめ、さまざまなものが必要です。
- マイナンバー提出書類
- 住民票の写し
- 所得証明書(世帯全員分)
- 預貯金残高証明書
- 奨学金申請書(学校を通じて配布)
- その他、ひとり親家庭であることを証明する書類(児童扶養手当証書など) 書類は多岐にわたるため、早めに高校の先生や進学先の学校に確認し、準備に取り掛かることが重要です。
- 申請:
- 予約採用の場合: 高校を通じて申請します。高校の担当の先生に相談してください。
- 在学採用の場合: 進学先の大学・専門学校の窓口(学生支援課など)を通じて申請します。
- 審査・決定: 申請された書類に基づき審査が行われ、支援の可否と支援区分が決定されます。
4-3. 申請時期
予約採用は、高校3年生の春から夏にかけて募集が行われることが多いです。在学採用は、大学等入学後の春に募集が行われます。詳しい申請期間は、日本学生支援機構や所属する高校、進学先の学校から案内されますので、見逃さないようにしてください。
5. どこに相談すれば良いか
情報が多く、手続きに不安を感じる場合は、一人で抱え込まずに積極的に相談することが重要です。
- 高校の先生: お子様が高校生の場合、進路指導の先生や担任の先生が、制度の概要や申請手続きについてアドバイスしてくださいます。
- 進学先の大学・専門学校: 入学を希望する学校の入学課や学生支援課は、具体的な手続きや学内でのサポート体制について詳しい情報を提供しています。
- 日本学生支援機構(JASSO): 制度を運営する公的機関であり、ウェブサイトには詳細な情報や「チャットボット」による質問応答、電話での問い合わせ窓口が設けられています。最新かつ正確な情報はJASSOのウェブサイトでご確認ください。
- 自治体のひとり親家庭支援窓口: お住まいの自治体によっては、ひとり親家庭向けの教育費支援や相談窓口を設けている場合があります。他の支援制度との連携を含め、総合的なアドバイスが得られる可能性があります。
まとめ
高等教育の修学支援新制度は、ひとり親家庭のお子様が大学や専門学校へ進学する際に、経済的な面で大きな支えとなる重要な制度です。給付型奨学金と授業料等減免が一体となって支援されるため、家計の負担を大幅に軽減することが期待できます。
この制度を活用するためには、制度内容の正確な理解、対象条件の確認、そして何よりも早めの情報収集と計画的な申請準備が不可欠です。疑問点や不明な点があれば、高校や進学先の学校、日本学生支援機構、または自治体の相談窓口へ積極的に相談し、お子様の学びの機会を最大限にサポートしてください。この制度が、お子様の将来の夢を実現するための一助となることを願っております。